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メールマガジン「がんばりすぎないセキュリティ」No412 (25/06/30)

おさいふケータイのふしぎ(412号)


前回と前々回では、ICカードを用いた電子マネー、バーコード決済のお話をしました。

 電子マネーのふしぎ(410号)(2025年6月配信)
 https://note.com/egao_it/n/n8d0b0d257f58

 バーコード決済のふしぎ(411号)(2025年6月配信)
 https://note.com/egao_it/n/n8d0b0d257f58

キャッシュレス決済の話が続きますが、今回は誰もがフシギに思うであろう、おサイフケータイについてです。


1. おサイフケータイ

おサイフケータイは、元々電子マネーの仕組み(Felicaと言います)を開発したSony自身によって開発されました。 「おサイフスマホ」ではなく「おサイフケータイ」というくらいですから、その登場はかなり古く、2004年(20年以上前!)なのだそうです。 電子マネーに使われるICカードと同じ仕組みのIC(半導体チップ)をケータイの中に組み込み、携帯電話で銀行口座からチャージができるという画期的な仕組みでした。 この仕組みは現在も同様で、多くのスマホ(AndroidもiPhoneも)にも同様のICが組み込まれています。 逆に言えば、このICチップが搭載されていない機種では、いくらアプリを入れたとしてもおサイフケータイは利用できません。 実際、筆者が使っているiPhone(第2世代のSE。2020年発売)には、ICチップが搭載されていません。

2. おサイフケータイのしくみ

事前の準備(設定)をしておけば、おサイフケータイ機能は、スマホの状態に関わらず使用できます。スマホでのアプリ起動も不要ですし、スリープ状態(画面が消えている状態)でもタッチできます。 これは、電子マネー用のICチップと同様のチップがスマホに搭載されているためです。 つまり、電子マネーのICチップがバッテリなしで動作しているのと同様に、おサイフケータイに組み込まれたICチップは、ほぼスマホの電源なしで動作できるようになっているのです。 もっとも、一部にスマホ側に記録を転送するなどのやりとりが必要ですし、電子マネーで使われているICに比べれば高機能ですので、スマホ側のバッテリもほんの少しですが必要です。ですので、完全にバッテリ切れの場合はおサイフケータイは利用できません。 さて、スマホを改札機などのタッチ部分にタッチしますと、そこからICチップに電気が供給されます。それによってICチップが起動し、改札機との通信を行います。この仕組みは電子マネーに搭載されたICチップと全く同様です。 そして、この間スマホは何もしていません。 その後、ICチップはスマホ内のアプリに入場や出場の記録(改札機を通った場合)や支払い記録を通知します。これによって、スマホのアプリ(モバイルSuicaなど)を起動すると、直前の利用履歴が見られるわけです。

3. 複数カードの使い分け

おサイフケータイでは、複数のカード(Suicaと楽天Edyなど)を登録し、シーンによって違ったカードが使えます。 例えば、通常はSuicaを使うけれど、楽天ポイントがたくさんもらえるお店では楽天Edyを使うといった使い分けです。 物理カードを使う場合は、そのカードをかざせばいいわけですから、わかりやすいのですが、スマホの中に複数のカードを登録してある場合は、どうなるのでしょう? 実際に使っていてもふしぎですよね。 どうやって識別しているんでしょうか? これはリーダ側(改札機、コンビニのレジなど電子カードを読み取る側)から信号を送って実現しています。こういった信号のやりとりをプロトコル(通信手順)と呼びます。 例えば、駅の改札機の場合、改札機側のリーダが「交通系の電子マネーを提示してね」と送ります。 ICOCAのICカードなら「はい。私は交通系の電子マネーです」と返します。 おサイフケータイの場合は、ICチップの中にSuicaやICOCAが登録されていれば、まるでSuicaやICOCAであるかのように返信します。 コンビニで支払いをする場合も同様です。 コンビニで「お支払いは?」と聞かれ、種類(nanacoだとか、iDだとか)を言えばスタッフさんが端末操作しますよね。あれを行うことで、リーダ側が呼びかけるカードの種類が違ってくるのです。 おサイフケータイのICチップは呼び出された種類のカードが登録されていれば、その電子マネーであるかのように「はい。私は○○です」と返信し、それ以降の支払いを行うわけです。 余談  ICチップの通信手順上は、関係ないカードは「黙ってる」ルールになっています。  そのため、複数の物理カードを束にしても、実はエラーになりにくいように工夫がなされてます。  こう書くと「いやいや、昔は重ねて改札入ったらエラーになったで!」とおっしゃるかも。  これはSuicaとICOCAのような同種(システム的に同じコード)のカードを2枚提示すると、2枚がそれぞれ「はいはい」とやってしまうために、エラーが回避できないことがあったからなんですね。

4. まとめ(今日からできること)

キャッシュレス決済の3回目ということで、今回は「おサイフケータイ」を取り上げてみました。 電子マネーのうち「おサイフケータイ」が半分程度だそうですから、今も愛用している人は多いようです。実際に駅でスマホを使ってタッチしている方おられますものね。 筆者はというと、ICカードの電子マネーは使っていますが、おサイフケータイは使っていません。冒頭で書いた通り、端末が古すぎて対応していないからです。 おサイフケータイという表現から「大金を扱うのでは」と考える方もおられるでしょうが、電子マネーの上限はおおむね5万円(運営元による)です。 事前チャージ式なら、チャージした分しか使えないなど、使いすぎを抑制しやすい点もオススメです。 現金とは違ったメリットがありますので、一度試してみてはいかがでしょうか。 今回は、おサイフケータイのお話でした。 次回もお楽しみに。 今日からできること。  ・おサイフケータイはほとんどのスマホで使える。   ※海外機種、古い機種はNGの場合あり。   ※iPhoneの場合は使える電子マネーの種類に制限あり  ・利用履歴もスマホだけで確認できる。  ・電子マネーの種類により、事前チャージ式と、後払い方式がある (本稿は 2025年6月に作成しました)

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