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前回は、電子マネーのお話として、ICカードを用いた電子マネーのお話をしました。 電子マネーのふしぎ(410号)(2025年6月配信) https://note.com/egao_it/n/n8d0b0d257f58 今回は、前回お話できなかった、バーコード決済についてお話をします。 お詫びと訂正:前回記事で、バーコード決済を電子マネーの一部と書きましたが、用語の定義はまだまだ流動的なようです。敢えて言えば「キャッシュレス決済には、電子マネーやバーコード決済が含まれる」という表現が現状では妥当なようです。1. バーコード決済
国内のICカードを使った電子マネーは、ブランド名は様々でしたが、実質的にはFelicaと呼ばれるSonyが作った仕組みにほぼ集約されていました。 それに対し、バーコード決済もICカードを用いた電子マネーと同様にキャッシュレス決済のバリエーションの一つですが、統一した仕組みがあるわけではありません。(統一しようとする動きはありますが、まだまだです) バーコード決際については、2025年1月現在では、Paypayが圧倒的な利用率(60%以上)を誇っており、楽天pay、d払い、aupay、ファミpayなどがそれを追う形となっています。 ただ、仕組みがバラバラとしても、利用方法までバラバラでは利用者側や店舗スタッフ側もたまりません。 そのため、利用者側、店舗スタッフ側から見た時の手順はほぼ統一されています。 その手順はおおむね以下の通りです。 1. スマホでバーコード決済ソフトのバーコードを提示します。 2. 店舗スタッフがそれを読み込みます。 3. 決済が行われ、スマホにも結果が表示されます。 このパターンは、前回書いた電子マネーでコンビニ払いをした場合とほぼ同様ですね。 国内でのバーコード決済は、ほぼ上記の提示型(ストアスキャン型とも)ですが、実は「読み取り型(ユーザスキャン型)」と呼ばれる方式もあります。こちらは個人経営のお店やイベント会場などでよく利用される形態です。 こちらは、このような手順になります。 1. スマホのバーコード決済ソフトで、店舗に張ってあるQRコードを読みます。 2. 金額を入力し、お店の人に「これでいいですね?」と確認します。 3. 「OK」すると、決済が行われ結果が表示されます。 この場合、スマホだけで全ての決済処理を行うことになります。2. 提示型の裏側
バーコードをスマホで表示してお店に提示する場合、裏側(運営会社と店舗機器やスマホとの間)では次のような処理が行われています。 1. スマホでバーコード決済ソフトのバーコードを提示します。 1-1 スマホは運営会社サーバに接続し、決済用ID番号などを取得します。 1-2 その番号をバーコードやQRコードに変換して表示します。 2. 店舗スタッフがそれを読み込みます。 2-1 バーコードリーダの場合、1次元バーコードを読み込みます。 2-2 カメラなどで撮影する場合は、QRコードを読み込みます。(※後述) 3. 決済が行われ、スマホにも結果が表示されます。 3-1 店舗側の機器(POS端末など)が運営会社サーバに接続します。 3-2 決済用IDと金額を提示し、決済を依頼します。 3-3 運営会社は決済を行い、結果を店舗側に通知します。 3-4 同時に、運営会社からスマホにも結果を通知します。 これを見てわかる通り、スマホも店舗側の機器もインターネット上に接続していることが必須条件となります。 なお、多くの決済サービスでは1次元バーコード(いわゆるバーコード)とQRコードの2つが表示されていますが、この両者に載っている情報は異なっています。 1次元バーコードの方は、その時点で使える決済用番号だけが納められており、これをお店のバーコードリーダなどで読み込んで処理します。 一方、スマホを店舗端末のカメラなどに向けて認識してもらうタイプのものはQRコードを利用しています。 こちらには、決済用番号だけでなく、よりセキュアな通信に必要な情報(電子署名など)も埋め込まれています。 と、これだけを聞くと1次元バーコードは不安に感じますが、1次元バーコードはあくまでバーコードリーダ用であり、店舗側のPOS端末でバーコードを読みこんだ場合も、運営会社とは安全な通信ができるような仕組みが店舗側POS端末に用意されています。 つまり、1次元バーコードの場合は、店舗側の端末が安全な通信を保証できる仕組みになっていて、安全性に問題はありません。3. 読み取り型の裏側
一方、店舗には紙のQRコードだけが用意されている場合は、スマホだけで全ての手続きを行うこととなります。 1. スマホのバーコード決済ソフトで、店舗に張ってあるQRコードを読みます。 1-1 QRコードの店舗コードをスマホで読み取ります。 2. 金額を入力し、お店の人に「これでいいですね?」と確認します。 2-1 金額を入力して、お店の人に確認してもらう。 3. 「OK」すると、決済が行われ結果が表示されます。 3-1 「支払い」ボタンをクリック 3-2 スマホが運営会社に接続し、店舗コードと金額を通知 3-3 運営会社で決済処理を行い、その結果をスマホに通知 3-4 決済結果をお店の人に見せて、決済ができたことを伝える。 これは店舗側にインターネット接続できない場合には便利な方式ですが、お店の人にスマホを何度も見てもらうなど手間がかかります。 そのため、大手のサービスではほぼ提示型に集約されていますが、レジ効率をそれほど求められない、個人店舗やネット回線の準備が大変なイベント会場などではよく使われています。 また、海外でも発展途上国では店舗側のネット環境が必ずしも整っていません。 そのため、読み込み型のバーコード決済が日本よりずっと普及しているようです。 特に、ニセ札リスクを避けられる、大量の現金を持ち歩かなくていい、といった点が魅力的に映るようです。 余談: 国内最大規模のイベントであるコミケ(コミックマーケット)では、バーコード決際による通信負荷の方が問題になるそうで、むしろICカードを使った電子マネーの方が利用されているそうです。 このイベントでは数十万人のネットに精通した若者が来場するイベントであるため、ネットワークの利用が通常イベントとは比較にならない高密度な運用となるそうです。 通信会社にとって、最高レベルに厳しい負荷テスト(ストレステスト)が行える貴重な実験場なのだそうです。4. まとめ(今回お話したこと)
キャッシュレス決済という方式は、従来クレジットカードが一強でしたが、この10年程度で、電子マネーやバーコード決済が登場して、一般化しました。 中でもバーコード決済はスマホさえあれば使えますから、非常に使い勝手の良いサービスと言えます。 もちろん、安全性については、十二分に考慮されています。 チャージ方式(あらかじめ入金しておく方式)であれば、使いすぎへのガードにもなります。 この記事が、今まで莫然とした不安で、電子マネーやバーコード決済の利用を躇っていた方の一助となれば、幸いです。 次回もお楽しみに。 今回お話ししたこと: ・バーコード決済はキャッシュレス決済の一つ。 ・大規模店舗では、提示型(ストアスキャン型)が主流 ・小規模店舗では、読み取り型(ユーザスキャン型)も多い。 ・いずれの方式も通信内容は十分に安全性に考慮されている。 (本稿は 2025年6月に作成しました)
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