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ドメインの不用意な廃棄(使用権の放棄)で、苦しむ方が後を絶ちません。 実際、ドメインの取得はホントに簡単ですが、廃棄は実に難しいのです。 「捨て方が9割」は決して煽っているわけではなく、純然たる事実です。 今回は、ドメインの廃棄についてお話します。1. ドメインとは?
ドメインとは、インターネット上の住所の「別名」のようなものです。 例えば、待ち合わせする時には、誰もがわかる言い方をしますよね。東京なら「ハチ公前」や「銀の鈴」、大阪なら「ヨドバシ梅田前」とか「ビッグマン前(これは今でも現役かな)」とか。 つまり、住所じゃなくて、ランドマークというか目立ったもので場所を決めますよね。 あれが「ドメイン」に該当します。 しかも、このランドマーク、自分で好きな名前が付けられるのです。 筆者は、egao-it.com というドメインを「えがおIT研究所」用のドメインとして登録して、利用していますが、未使用でありさえすれば(細かいルールはありますが)、誰でも取ることができます。 ただし、ここで大事なポイントがあります。 このドメインというもの、全人類の資産です。買い取りは許されず、永遠に賃貸です。 なので、通常は毎年、使用料(権利料)を払います。支払いをやめると、そのドメインは、誰もが自由に取れるフリー状態となります。 フリー状態のドメインを誰が取得するかは、元利用者といえど、コントロールできません。 さて、当初はずっと使うつもりで使用料を払い続けたドメイン。 それでも、いろんな事情で、要らなくなることがあります。 会社名変更やブランド名の変更が、典型的ですね。 こんな場合、不要になったドメインをどのように「お片付け」すればよいのでしょうか?2. ドメインを使い始める時の3アイテム
最初にドメインを使い始める時のお話をします。 自分達の組織でWebサイト(ホームページ)を公開したい、と思ったら、以下の3つのアイテムが必要です。 1. ドメインの使用権 2. Webサーバ 3. DNS(電話帳みたいなもの)への登録 ややこしいのは、この3つ、それぞれ関係のない個別サービスなんですね。 ドメイン使用権はレジストラと呼ばれる業者との契約、Webサーバはレンタルサーバ会社などとの契約、DNSも専門業者との契約(レジストラ兼任も多い)となります。 とはいえ、実際には、Webサイトの構築をする業者が代行してくれますから、この3つを意識している方はごく少数。この事実が、ますますドメイン廃棄の仕組みがわかりにくくしてしまっています。 このように、Webサイトの運営には、この3つの契約を必ずしています。 逆に言えば、ドメインを廃棄する時には、この3つをどのように廃棄するかを考える必要があるわけです。3. (余談)DNSというサービス
上記の3つのうち、DNSというのがわかりにくいので、少し補足します。 このDNSというのは、インターネットを支える裏方のサービスです。 実は、Webサーバだけがあっても、誰もそのサイトに訪問できません。 Webサーバがインターネット上のどこに設置されているか(具体的にはそのサーバのIPアドレスが何番なのか)がわからないとアクセスできないからです。 その設置場所を教えてくれるのが、DNSサービスです。4. ドメイン使用料の支払いは最後まで続ける
さて、この3つの契約をどのように解約、廃棄すれば良いのでしょうか? まず、気を付けていただきたいこと、ドメイン使用料の支払い停止のタイミング。 これは、必ず一番最後、全てのお片付けが終わってからにします。 なぜか?Webサイトの廃棄時点では、そのドメインの認知度があがり、価値もあるのです。 だから、「風化させ」て、ドメインを価値のないものにしてから廃棄すべきだからです。 なぜ価値を下げないといけないのか? 価値のあるドメインは、アクセスを集めたい新規サービスに、とても魅力的だからです。 例えばGoogle検索で上位に出てくるドメインなら、コストをかけてでも入手したい人が出てきます。 まっとうな目的でドメインを再取得されることは、あまり問題になりません。 ですが、それがニセサイトやブランドを騙るサイトとなると大問題です。 ドメインの乗っ取りとか、第三者による悪用といったニュースが時々流れますが、その多くは、ドメイン使用権の不用意な放棄が発端となっています。 2025年にも、アトレカードというカード会社がずっと前(2015年頃)に使っていたドメインが悪用されました。アトレカードでは、古いカードの券面に旧ドメインが記載されていたため、公式ページでその注意喚起をせざるを得ませんでした。 配布した紙やカードに記載されたURLはいつまでも残り続け、回収もできません。 その怖さが露呈した事件と言えます。5. ドメイン廃棄のスケジュール
ドメインの価値を下げるには、かなりの時間がかかります。 ドメイン廃棄の決定から、実際の廃棄までには、筆者の肌感覚では、最低でも5年、場合によっては10年以上の時間が必要と考えています。 そのスケジュールはこんな感じになります。 1. Webサイト(旧)の整理 →コンテンツを削除し、サイトクローズの案内、新サイトへの誘導 2. Webサイト(旧)の停止(数ヶ月〜1年後) →Webサーバ(旧)の契約解除 →Webサーバ(新)の設定変更(旧サーバと同等の応答をさせる) →DNSサーバの設定変更(新サーバを指すように変更) 3. ドメインの風化待ち(5年〜10年間) →使用状況(どれくらいのアクセスがくるか)の確認 4. ドメインの放棄 →アクセスがほぼなくなったことを確認後、使用権を放棄 →ここまで、使用料を払い続ける 5年〜10年間というのを見て驚かれる方も多いと思いますが、これくらいは時間をかけないと、そう簡単には風化(皆が忘れ去る)は難しいということです。 この10年ですら、一つの目安にすぎません。10年=安心、とは言い切れないところが、ドメイン廃棄の難しさでもあります。6. まとめ
「ドメインを取得しませんか?」という宣伝は多いですが、不必要となったドメインの廃棄については、あまり情報がないのが現実です。 ですが、今回書いた通り、ドメインの廃棄は実に大変な作業です。 今回は、あまり書きませんでしたが、実際には、DNSでのメール対策、アクセス元の分析、アクセス元へのURL変更の依頼など、細かい作業を、何年も継続する必要があります。 情報システム部門の専任者がいない組織では、この一連の作業実施は、かなり難しいのが実際のところ。専門知識なしでは思わぬ事故になりかねません。 ドメイン廃棄をお考えでしたら、取引先の中でもネットワークに強い専門家にご相談されることを強くおすすめします。 今回は、ドメイン廃棄についてお話しました。 次回もお楽しみに 今日からできること: ・ドメインの不用意な廃棄は非常に危険です。 →悪用されるリスク、信用棄損のリスクがあります。 ・ドメインの廃棄には入念な準備が欠かせません。 →専門家の助言も得ながらすすめましょう。 (本稿は 2026年2月に作成しました)
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