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2025年の後半から、PC(パソコン)用のメモリ需給がかなり逼迫してきています。この原因として、生成AIブームがよくいわれていますが、どうして生成AIがそんなにメモリを使うのでしょうか? また、需給が厳しいということは、逆に言えば大きく儲かるはずなのに、どうして投資が進まないのでしょうか? 今回は、半導体業界のジレンマと、ひるがえって、2026年はパソコンに投資すべきか?ということについてお話します。1. 生成AIでメモリが必要な理由
生成AIは、メモリを大量に必要とします。皆さんもご存知のように、生成AIは巨大な知識データベースから、関連性の高いキーワードを探しだすわけですが、この過程では、膨大なマトリックス(組み合わせ)演算が必要です。 意外かもしれませんが、もはや生成AIの計算能力は大きな問題ではなかったりします。それ以上に、短時間に大量データを演算回路に届けるための、転送速度の方がずっと大きな課題になっています。 では、演算回路に大量データを届けるには、何が一番向いているでしょうか? そう、データ転送速度を最重視すると、全てをメモリ上に置く以外の選択肢はありません。 メモリといっても、通常のパソコンに使われる汎用メモリでは遅すぎてお話になりません。HBM(High Bandwidth Memory)などの最先端のメモリを、どのAI事業者も喉から手がでるほど欲しがっています。 つまり、数年前には考えられないほど、急激にメモリ需要が膨らんだことが、2026年のメモリ供給不足の実態なのです。2. じゃあ、工場を作れば?
これは考えようによっては、大チャンスです。大量にメモリを供給すれば、メーカは大儲けできるわけですから。 とはいえ、製造ラインはそれこそ半年先、1年先まで製造予約でパンパンで、増産できる余地などありません。 じゃあ、工場を作ればいいのか?というと、そう簡単な話ではありません。 最先端の半導体工場を作ろうとすると、1兆円を超える資金、工場用地、大量の電力供給、優秀な人材、さらに製造装置メーカとの綿密な協力体制も欠かせません。 どれも簡単に揃わないものばかりです。 全てが揃っても、量産開始までには、数年の期間を要するのが通常です。 日本国内で、最先端を目指す半導体メーカが2022年8月に発足しましたが、2026年1月現在も、主要設備の設置がおおむね終わり、ようやく試作に入ったという段階です。別にこの会社が遅いのではなく、それだけ時間がかかるということです。 今、メモリが足りないとしても、今から投資していたのでは、まるで間に合わないのです。これは何十年も前から半導体メーカが抱えている構造的な課題なのです。3. 汎用品は魅力がない
この状況ですから、メーカとしては、利ざやの薄いパソコン用の汎用品よりも、高付加価値なAI向けメモリを優先して製造するのは、あたりまえです。 同じ生産設備を使うのなら、利潤を最大化しようとするのは当然の話です。 結果として、私たちが使うパソコン用の製造ラインは最少限にし、儲かるAI用のメモリ増産に突き進むことになります。 この状況は、おそらく2026年中は変わらないのではないかと言われています。 メモリ価格は良くて現状維持、円安が進めばさらに値上がりというのが現実ではないかと思われます。4. それでも必要ならパソコン新調を
「そんなに、値上がりするなら、今のパソコンを延命しよう」と思いたくもなりますよね。特に手元にあるWindows 10を使い続けたい、という気持ちもわかります。 実際、Windows10には、有償でセキュリティアップデートを受けるという選択肢があります。(Windows10では個人でも申し込めるようになりました) それでもですね、筆者としては「必要なら新調する」が現実的な解だと信じます。 あたりまえなんですが、古いパソコンはWindows11を動かすには遅いんです。Windows10を延命する方法もありますが、タダではありません。どうせお金を使うなら、後ろ向きな有償のセキュリティアップデートより、前向きなパソコン新調に使った方がいいと思います。 豆知識になりますが、一般にパソコンの体感速度はCPU以上にメモリ容量に左右されます。 Windows10では、8GBが一つの目安でしたが、Windows11では8GBでは厳しく、12GBは必要です。ですが、12GBなんて中途半端な製品は売っていませんので、現実は16GBということになります。 8GBから16GBにしたって、1万円程度の差額です。ここはケチらずにいきたいものです。 いやいや、それでも費用が...という方なら、CPUをグレードダウンしてでもメモリたっぷりにする方が、結局はイライラせずに済むと思います。5. まとめ
今回は、半導体産業のお話と、パソコン購入の判断についてお話しました。 文中でもチラっと書きましたが、この半導体の需給問題というのは、というのはかなり構造的な問題です。 それこそ1980年代あたりから、需要の急増→各社が投資→一斉に供給開始→供給過多による暴落、というサイクルを延々と続けています。 これは、投資から回収開始までに時間がかかる半導体産業のビジネスモデル自身が抱えている構造的な問題です。 今回はたまたま生成AIというわかりやすい需要の急増が原因となったわけですが、それこそインベーダゲーム(古いな。笑)でのCPU不足などは本当にひどかったそうですし、1Gbメモリの立ち上げ期には、各社が似たタイミングで増産を始めたために、半年も経たずに、価格が暴落するというケースもありました。 一言でいえば、どちらも「半導体産業あるある」なわけです。 今回は、メモリ不足をテーマに半導体産業のお話とパソコン購入のお話をしました。 次回もお楽しみに。 今日からできること: ・Windows10の延命はあまりおトクな投資ではありません。 ・パソコンは必要と思った時が、買い時です。 (本稿は 2026年1月に作成しました)
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