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今回はドメインというもののお話をします。 ドメインについては、以前もお話していますが、時間が経ち、鮮度の落ちた情報はアップデートしないといけません。 筆者自身の情報もアップデートしていますので、それを皆さんにもお伝えしたいと思います。1. ドメインとは?どこで使われている?
ドメインはインターネット上の住所とも言われるURLなどに使われています。 住所という言い方がよく使われますが、物理的な場所とは関係がありません。 好きな文字列をチョイスできる点などは、住所よりブランド名の登録商標に近いですね。 ドメイン(domain)というは英語で領土や領域を示す言葉です。 インターネットでの自分の領域に名前を付けるという意味で、これをドメインと呼んでいます。 URL(Uniform Resource Locator)はChromeやSafariなどのインターネットブラウザでアクセスする時にこんなのを使いますよね。 https://google.co.jp/ この google.co.jp がドメインです。 また、メールアドレスにもその組織のドメインが含まれています。 例えば、以下は筆者の会社の問い合わせメールアドレスです。 info@egao-it.com ここでは、egao-it.com がドメインです。2. ドメインは誰でも取れる
こういったドメインというのは、、一部を除いて、誰でも(個人でも)取得できます。 例外としては、xxx.go.jpが政府の関連団体専用だったり、xxx.co.jp は日本で登記済の法人しか取れないといったものもあります。 一方で、xxx.comや xxx.jp といったドメインの取得は誰にでもできます。 ドメインの取得にはいくつかの原則があります。 まず、同じ名前のドメインを複数の組織や人が取ることはできないという点。 例えば、smbc.jpというドメインは 三井住友銀行が持っています。 仮に株式会社SMBCという会社もそのドメインを使いたいと思っても、smbc.jpは取得できません。 次に、ドメインの取得は早い者勝ちです。 上記の株式会社SMBCがsmbc.jpを先に取得していたとすると、三井住友銀行といえども、後から横取りはできません。 また、ドメインの取得は永続的な権利ではなく1年間限定の使用権となります。 ですので、1年後に使用権の更新をしなければ、使用権は失われます。3. ドメインの使用権は有償
ドメインを保有し続けるには、毎年お金がかかります。これも登録商標と似ています。 費用は1年で数千円から数万円程度です。 毎年、費用を支払い続けている限り、ドメインの使用権はなくなりません。 支払いをしなければ、当然ながらドメインの使用権は失われます。 この使用権放棄にはとてつもないリスクがあります。 ですが、この事実は意外なほど知られていません。4. ドメイン放棄による被害
ドメインを放棄することによる被害は毎年のように報道されています。 2024年にも、SAP社の日本法人が保有していたドメイン(sapjp.com)が第三者に取得され、なりすましサイトとして活動していたようです。(2025年2月現在は閉鎖されています) この場合、SAPジャパン自身が注意喚起のリリースを出しています。 https://news.sap.com/japan/2024/07/%E3%80%90%E9%87%8D%E8%A6%81%E3%81%AA%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B%E3%80%91%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%99%E3%81%BE%E3%81%97%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%A8/ リリースを読むとわかりますが、SAPジャパンの著作物を無断利用するなど、かなり悪質な運用がなされていた様子です。 筆者の想像に過ぎませんが、水面下で新所有者と交渉し、費用を支払うなどしてクローズしてもらったのではないかと思われます。 もし、そうであれば、不用意なドメイン廃棄によって、多額の金銭を失った可能性があります。 また、少し前ですが、2022年には地方公共団体情報システム機構が「自治体ホームページの偽サイトに関する注意喚起」という異例のリリースを出したこともあります。 https://www.j-lis.go.jp/about/announce/attention_20220614.html ドメイン放棄による問題は信頼の失墜やブランド毀損だけに終わりません。 偽サイトによる風評被害が生ずるかもしれません。 例えば、医薬品を取扱うドメインが悪意のある第三者に買われ、粗悪な薬品による健康被害が生じた場合、直接責任はないにしても不用意な廃棄が責められるかもしれません。 放棄されたドメインを積極的に買いとって、エロサイトを展開している業者も存在しています。こういったサイトの中には元の保有者へのいやがらせとしてサイトを運営し、問い合わせがあれば、「クローズする代わりに保障をして欲しい」といった交渉に入るケースもあるのではないかと思われます。 こういったいやがらせサイトの中には既に反社会勢力の資金源になっているケースもあるのかもしれません。5. ドメインを持つということ
ドメインの廃棄は大きくわけて二種類になります。 一つは管理ミスによる失効、もう一つは意図的な失効です。 このうち、管理ミスによるドメイン失効は昔も今も後を絶ちません。 この多くは、自社でのドメイン管理が適切に行われていないためではないかと思われます。 これは訪問先の会社でお聞きした話ですが、ドメイン期限の管理をWebサイト制作会社に委託していたが、委託先が更新を忘れていたという事故がありました。 この会社の場合は、失効後2日でメールが届かなくなったところからスグに行動したため、ドメインの取戻しに成功しましたが、あわやドメイン失効となりかねないところでした。 制作会社の担当者が好意で対応していても、退職や長期療養でドメイン管理が行われなくなる可能性があります。管理されていなくても、失効するまでは普通に使えてしまいます。失効後に気付いても後の祭りとなりかねません。 結局のところ、自社のドメイン管理は自社で行うのが一番安全だということです。 ドメインの期限管理といっても何も難しくありません。 単にドメイン管理会社(レジストラと言います)から来る請求書に従って支払いをするだけです。総務部門の方で十分に対応できます。6. 一時利用の新ドメインは取るな
業態によっては、イベントやキャンペーンのために、新ドメインを取る場合があります。 もし、制作会社などから、こういった提案を受けた場合は断ることを強く強くオススメします。 もちろん新ドメインを全て否定するわけではありません。 拒否すべきなのは、xxx-campaign-2024.com みたいな2024年で消味期限が切れるようなドメイン、今回だけのキャンペーン名を付けたドメイン、などは決して取らないでください。 一時しか使えないドメイン取得をしても後の廃棄で困るだけだからです。 実際、大手の会社でも一時的なキャンペーンのために取ったドメインを再利用もできず、廃棄もできずに困っているという話を聞きます。 ですので、一時利用のために新ドメインを取得することは全くオススメできません。 ではどうすればいいのか? 筆者はサブドメインの利用をオススメします。 例えば、私の会社(egao-it.com)でイベントとして「お花見2025」を企画したとします。 通常ですと、次のようなURLになります。 一番目立って欲しいイベント名が末尾となり、インパクトは弱いですね。 https://egao-it.com/hanami-2025/ ですが、サブドメインを利用すると先頭にイベント名が付けられます。 https://hanami-2025.egao-it.com/ これなら、インパクトは多少強くなりますよね。 サブドメインにはさらにメリットがあり、削除してもドメイン廃棄とはならないのです。 つまり、サブドメインを削除しても、他者にそのサブドメインが悪用される可能性はゼロにできます。 だから、新イベントやキャンペーンサイトを作りたい場合はサブドメイン利用が一番安全なのです。7. それでも失効するなら時間をかける
え?「既に前の担当者がドメイン取っちゃったよ...どうしよう」って? この場合、安全を確保するには長期間のドメイン塩漬けを覚悟してください。 塩漬けというのは、ドメインを保有しつつ、そのドメインの風化(誰も知らない状態にする)を狙う戦略です。 ドメインを風化させるにも技術が必要ですので、専門家にご相談した上で時間をかけて廃棄することをおすすめします。 ここで言う「時間をかけて」の期間ですが、筆者の肌感覚では十年間が一つの目安かと考えています。8. まとめ
多くの法人では、それぞれのドメインを保有しています。 ドメインの使用権は、1年単位での支払いが必要ですので、支払いをしなければ使用権もなくなります。 ところが、使用権の切れたドメインを積極的に購入している業者があります。 まっとうな運営をしているところもないとは言いませんが、いやがらせとしか思えない使い方をしているサイトが目立つ印象です。 その典型が本気とは思えないエロサイトの運営です。 元保有者からの問い合わせに「止めて欲しければカネを寄こせ」といった要求をする商売ではないかと思われます。 そのようなトラブルに巻き込まれないためには、永続利用するドメインだけを取得すれば良いのです。 それでも過去に一時利用のドメインを取ってしまった場合は、かなりの時間をかけて風化させるしかありません。 この作業にはある程度の技術と手間が必要ですので、専門家に頼ることをおすすめします。 今回はドメインを管理すること、特に取得する時の注意点をお話しました。 次回もお楽しみに。 (本稿は 2025年2月に作成しました)
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