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メールマガジン「がんばりすぎないセキュリティ」No404 (25/05/05)

信じられる情報源とは何か(404号)


情報過多の時代と言われて久しいですが、「信じられる情報」を見つけることは意外に難しいものです。
私自身もコアとなる情報源を結構な頻度で変えています。

常に同じ情報発信源を頼りにすれば、面倒くささはなくなりますが、その情報源に偏りがあると、おもわぬ誤解をしてしまう可能性があります。

今回は、自分なりに信じられる情報源というものについてお話します。


1. 誰の話なら信じられる?

インターネット全盛のこの時代、情報があふれていて、とても全てを読むことはできません。 その中でも皆さんは、自分が必要と思う情報をチョイスしています。 多くの方は、その発信者によって情報を選んでいるのではないでしょうか。 つまり、著名な人物が書いている、自分が知っている人が書いている、有名企業の名前で書かれている、といったものが「信頼に値する」と思うわけです。 でも、どうして著名な人物や有名企業の情報は信頼できると思うのでしょうか? 例えば、〇〇大学の先生ならたくさん勉強しているはず、〇〇株式会社ならウソは言わないはず、という「ブランド」を無意識でも信じている方が多いのではないでしょうか。 でもこれって、一歩間違えば「思考停止」になりかねませんよね。

2. 白書はなぜ信頼されるのか?

〇〇白書と呼ばれる文書があることはご存じでしょう。 「警察白書」だとか「防衛白書」「中小企業白書」などはニュースでも引用される信頼できる情報源の扱いです。 私も商売柄、「情報セキュリティ白書」はよく参照しますが、その緻密さ、網羅度、内容の濃さには驚かされます。 そして、その内容を疑うことはほとんどありません。 白書というのはその方面の専門である行政機関が責任を持って編纂をしています。もし間違っていれば、その行政機関の信頼度が地に落ちる、つまり自分たちの顔に泥を塗る行為だからです。 そのため、〇〇白書はウソや間違いが入りこまないように厳密な編集が行われていますし、内容の裏どりも緻密に行われています。 ところが、こういった白書はあまり一般の方が読んでいるという話を聞きません。なぜか?理由は明確で、ちっとも読みやすくない、いえ正直言って、めっちゃ読みづらいものも多いからです。

3. 正しければいいってもんでもない

白書のような情報の発信源が取りまとめた資料を一次資料と言い、その一次資料を用いて書かれた資料を二次資料と呼びます。 一次資料は非常に厳密で正確ですが、「正確すぎる」のがかえってあだになります。 つまり、データ量が多すぎて、自分が欲しい情報がどれかを探すのが大変なんです。 例えば、政府の予算を調べたいとします。 各省庁のデータを集めてしらべようとすると、その情報量に圧倒されます。こちらが一億円単位などでの省庁別のサマリーを欲しいと思っても、そううまくは見つかりません。かといって個別のデータを探して集計なんてしようものなら、量が多すぎて終わりが見えないでしょう。 結局、一次資料は正確ですが、正しければいいというものでもないのです。 そこで価値が出てくるのが二次資料です。 一次資料を噛み砕き、集計し、要約した資料が二次資料です。 多くの場合、情報としては二次資料(もしくはさらにそれを加工した三次資料)が取り扱いのしやすい、使い勝手の良い情報となるわけです。 実際に、皆さんが日常的に利用する情報、例えばマスコミ、雑誌、Webサイトに掲載される多くは二次資料です。一次資料よりずっと読みやすいですよね。

4. 単一の情報源だけに頼るのも危険

ですが、二次資料には逆の危うさが潜んでいることは意識すべきでしょう。 つまり、一次資料が目指したものとは逆方向の知識を得てしまうリスクです。 テレビなどでは主要な白書が公開されると「本年度の警察白書によると、昨年度の〇〇の被害は過去最高となっていることがわかりました」と報道されます。 これだけを聞くと「なんだか、どんどん治安が悪くなってるんだなぁ」と思うわけですが、実際に警察白書を見るとその真逆の事実が書かれていることもよくあります。 例えば、空き巣の件数は年々減ってきていて、この15年で1/4以下になっていますが、普通は知りませんよね。(筆者も調べて驚きました) どうして、そういった事実を知らないのか? それはテレビやマスコミといった報道メディアでは耳目を集める内容優先だからです。 空き巣が15年連続で減りました、なんてニュースとしては地味すぎますものね。 わざわざ報道するほどのことか?となりかねません。

5. だからこそ、信頼できる発信源が必要

では、どうすればいいの?ということなのですが、信頼できる情報源を自分なりに探そう、という少々身もふたもない結論になります。 そんなに難しいことを言ってるわけではありません。 気になるテーマごとに、二つ以上の情報源を持つようにすればいいのです。 ずっと昔にも、新聞を読むなら「朝日新聞」と「産経新聞」を比較通読すればいいと言われていましたよね。あれと同じことです。 ただ、現代は情報量が新聞主流だった昭和の時代とはまるで違いますから、もう少し現実的な指標を提示したいと思います。 日常的に頼る主情報源はそのままに、「いざというときに参照する予備情報源」を持つという方法です。 日常は主情報源だけから情報を得て「あれ?ホント?」と思ったら予備情報源に当たるという方法です。 これなら無理せず皆さんの興味の範囲から取り組むこともできると思います。

6. まとめ(今日からできること)

情報の発信源には一次情報と二次情報があります。 一次情報は正確さも網羅度も高いものの、それを紐解くには時間と労力がかかりすぎます。 なので、一般的には二次資料からの情報が中心となりますが、今度は意図しない形で誤解を産む可能性があります。 筆者のオススメは、お気に入りの(信頼できると思う)情報源をベースにしつつ、いざというときに頼れるもう一つの情報源を自分なりに確保しておくことです。 こういった情報源というのは「ヨシ今から探すぞ」とがんばって探すというものではありません。 皆さんがインターネット上で「この人(この組織)の言うことは私の考えに近いね」と思えば、それを積極的にブックマーク(しおり)を付けておいてください。 その上で、日常的に使っている情報源の内容を「あれ?」と思ったら、そのブックマークをたどってみてください。 両者の内容が同じなら「間違ってなかったんだ」となりますし、食い違いがあれば「あれ?今の情報源って頼りにして大丈夫なのか?」と考える機会が得られます。 今日からできること:  ・情報を見た時に「いいな」と思ったらブックマークすること。  ・いつもの情報源で「あれ?」と思ったらそのブックマークを参照すること。 今回は信頼できる情報源についてお話しました。 次回もお楽しみに (本稿は 2025年5月に作成しました)

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