前号: No 367 / 次号: No 369 / 一覧(note.com)へ / ブログページに戻る
最近、サポート詐欺広告の話をちらほらと聞きます。 特に7月後半には読売新聞オンライン上でサポート詐欺の画面が出てきたという話がX(旧Twitter)で話題になっていました。(もちろん、読売新聞側は被害者です) 今回は、サポート詐欺の仕組みや回避方法についてのお話です。1. サポート詐欺
ChromeやEdgeといったブラウザでインターネット上のサイトにアクセスすると小さなイラストや写真のついたバナー広告がよく出てきます。 サポート詐欺は、こういった広告を利用した詐欺です。 例えば「台風接近注意」や「上の画像をクリック」といった広告のクリックすると、その広告とは無関係に「このPCはセキュリティ上の理由からブロックされています」といった警告画面が表示されます。さらに、大きな警告音とともに「今すぐお電話を」「この画面は閉じないでください」といったあおり文句が表示されます。 既にお気づきと思いますが、この警告画面自体が「広告」で、その内容が詐欺なのです。 詐欺広告ですから、警告内容は全く事実ではありません。ひらたく言えばウソです。 あたかも深刻な問題が起きているように思わせ、電話をさせて不必要なサポートを押し売りするのが目的です。 実際に電話をすると、対策と称してニセの警告画面を消すための「サポート」が行われ、数万円の費用を請求されます。実際にはパソコンには何もしていませんから「サポート詐欺」と呼ばれるのです。2. Web広告の仕組み
そもそも、Web広告の仕組みがわかりにくいのです。 Web広告には様々な登場人物がいます。 1. 広告主:宣伝したい人。広告したい人 2. メディア:広告を載せて稼ぎたい人 3. 広告代理店:両者の仲介を行う人 このくらいはイメージできる方が多いと思いますし、実際のごく初期のWeb広告のビジネスモデルはその通りでした。 ですが、Web広告が儲かるビジネスとなり、参加者は爆発的に増えます。 その結果、従来のメディア(新聞、雑誌、テレビなど)では実現できなかった手法が次々に編み出されます。 利用者によって異なる広告を出す仕組み、クリック数によって広告費用を決める仕組みなどはよく知られていますよね。 現在では、オークション方式で広告価格を決める仕組み、空いている広告枠を探してそこに出稿する仕組みなどもあり、初期よりはずっと複雑になっています。 その複雑さ故に怪しげな業者がもぐりこむ余地も残されることになります。 サポート詐欺はそれが表面化されたものとも言えます。 広告クオリティの担保は仲介役である公告代理店の責務ですが、その周辺業者とでも言うべき商売が続々と登場し続けるため、一社が責任を持てる体制になっていません。 広告代理店側も不正な広告を見つけ次第、契約違反で停止させますが、完全に「いたちごっこ」です。 これはWeb広告業界が自身で解決すべき問題ですが、新しい手法が次々と開発されている現状ですので、業界が責任保証できる体制に至るには何年もかかりそうです。 結局のところ、利用者自身で自衛をせざるを得ない状況というのが現実です。3. サポート詐欺にかからないために
以前は、上でも書いたように、広告をクリックすると動きだすサポート詐欺広告が中心でした。この対策は「不必要なものはクリックしない」でOKでした。 クリック型のサポート詐欺は現在もあるのですが、最近は特に何もせずとも勝手に広告画面に遷移する(突然、警告画面が出たように感じる)タイプの詐欺広告が増えてきています。 これは、広告の中にJavascript(プログラム言語の一つ)でサイト遷移するようなプログラムを埋め込んでおくことで簡単に実現できてしまいます。 もちろん、そんな危険なプログラムは広告代理店側との契約で禁止されていますが、そんなルールを守るくらいマジメなら、サポート詐欺なんてするはずもありません。 というわけで、利用者側で今回のようなサポート詐欺を避ける方法はないのが現状です。 だからこそ、上の繰り返しですが、自衛が必要なのです。4. サポート詐欺に出会ったら
サポート詐欺に出会うことは避けられませんから、出くわした時に落ち着いて対処できるようにしておきましょう。 まず、覚えておいていただきたいのは、どんな恐いことが書かれていても「ただの広告だ」と思うことです。 もし、大音量で警告音が鳴るようなら、スピーカの音量を減らしましょう。 ノートパソコンであれば、キーボード上にスピーカの絵が書かれたキーが2つあるはずです。このうち左側がたいてい音を小さくするキーです。これを押し続けましょう。 音は聞こえなくなるはずです。 デスクトップの場合は、スピーカはUSB接続ですからケーブルを抜きましょう。 ちなみにUSBデバイスは突然抜いても挿しても壊れない設計になっています。 余談:USBメモリの抜き挿し ちょっと話がそれますが、一般にUSBメモリは急に抜いちゃダメと言われています。 筆者も昔にUSBメモリを抜いたら作ったはずのファイルがなくなっている現象に出食わしたことがあります。 これはWindowsが気を効かせたことの弊害です。 Windowsでは、ファイルの書き込みや読み込みを高速化するためにバッファリングという手法を使います。ファイルコピーでの待ち時間を短かくするための見た目の時間を短縮する方法です。 実際には「コピー完了」を宣言しながらもコピーは終わっておらず、「完了」と言った後も裏でこっそりコピーを続けています。 そのため、コピーが終わったと思ってUSBメモリを抜くと、実はコピー中だったというケースがあるのです。 これがUSBメモリは急に抜いちゃダメと言われる理由です。いつでも抜き挿しできるはずのUSBですが、USBメモリの挿抜は気を付けてください。 話を戻して、次に画面を消す手順です。 とはいっても、サポート詐欺の多くは、画面を最大化し、×ボタンの付いた部分(タイトルバー)も非表示にしていますので、そのままでは消せません。 その場合は、キーボード左上隅にあるESCキー(エスケープキー)を長押しします。 数秒経つと、タイトルバーが表示されますので、×ボタンでウィンドウを閉じることができます。 タチの悪い広告では、ウィンドウを消してもスグに新たなウィンドウを表示する面倒なケースもあります。 この場合は、再起動(ControlとAltとDeleteを同時押しして、「再起動」を選択)しましょう。 ただし、再起動すると作りかけの文書などがなくなる可能性があります。再起動はあくまで最終手段にとっておいてください。 基本的にはこれだけで対処完了ですが、念のためお使いのマルウェア対策ソフトでフルスキャンをしておきましょう。 時間はかかりますが、「招かざる客」がまぎれこんでいると大変ですからね。 さて、上記の手順を図解している便利なPDFが公開されています。 https://www.ipa.go.jp/security/anshin/doe3um0000005cag-att/20231115173500.pdf これは、いつものIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の文書です。 税金で作られたものですから、ありがたく使わせてもらいましょう。 皆様のご親類など不安のある方にプレゼントすれば、きっと喜ばれると思います。 ちなみに、金銭などの実被害を受けた場合は、このメルマガの守備範囲を越えますので、警察に被害届を出してください。5. まとめ
インターネット上のバナー広告を悪用したサポート詐欺という詐欺があります。 これは、広告をクリックした時に警告画面を表示し、サポートを押し売りする商売です。 もちろん、広告からは詐欺であることは全くわからず、無難な内容となっています。 クリックすると、毒々しい警告画面と大音量の警告音が響きわたりますので、うろたえる方も多いと思います。 とはいえ、ただの広告ですので、単に無視しても問題ありません。 ただ、簡単には画面を消せないような工夫がされていますので、ESCキーの長押しなど画面を閉じた上で、マルウェア対策ソフトでフルスキャンをしておきましょう。 今回は、サポート詐欺についてお話しました。 次回もお楽しみに。
前号: No 367 / 次号: No 369 / 一覧(note.com)へ / ブログページに戻る